映画と僕。

暇さえあれば映画ばかり観ているノーフューチャーな中年男性による簡易レビューです。好みが偏っているので、できるだけ色々な作品のレビューを書こうと思っていますが、中々難しいかもしれません。

★★★★★★★★☆☆ 太陽を盗んだ男(1979/日本)

太陽を盗んだ男 概要>

1979年に公開された、長谷川和彦監督によるカルト映画。話は1970年代後半、高度経済成長期の末期を迎えた日本を舞台に、政治やメディア、個人の孤独や欲望などについて深く掘り下げ、さらに核兵器やテロといった重いテーマを据えている。公開後は各所で絶賛され、数々の映画賞を受賞したが、テロやバスジャック、さらには核兵器などを扱っていることから、ビデオが廃盤になるなど、長らく視聴が難しい時期があった程。

 

しかし後年になると同作を支持する層が増え『キネマ旬報』1999年「映画人が選んだオールタイムベスト100」日本映画篇では13位、2009年「オールタイム・ベスト映画遺産200(日本映画編)」〈日本映画史上ベストテン〉では歴代第7位に選ばれると、『キネマ旬報』2018年8月上旬号「1970年代日本映画ベスト・テン」では『仁義なき戦い』を逆転し、第1位に選ばれている。日本映画史に残る名作の一つと言っても過言ではない。

 

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いきなりだが、私はジュリーこと、沢田研二の大ファンである。

しかし今のジュリーには全く興味がなく、あくまで超人気歌手として君臨していた70年代のジュリーに限定するが。

 

そしてもちろん、「太陽を盗んだ男」も50回以上鑑賞しており、早稲田松竹で「暴力教室(舘ひろし)」との二本立てを見た時は震える程感動したものだ。何せ巨大なスクリーンで憧れのジュリーを堪能できたのは、本当に貴重な経験だった。

 

で、肝心なことを話そう。タイトルだけでは全く想像できないと思うが、一体この作品はどんな内容なのか?「太陽を盗む」とは、一体どんな意味なのか?

 

話は、ジュリー扮する中学の理科教師、城戸誠が生徒を連れて社会科見学へ行くところから始まる。今では考えられないことだが、その行き先は何と「原子力発電所」。そしてその見学を終えた帰り、何と誠たちはバスジャックに遭ってしまうのである・・・・。

 

笑うのは、そのバスジャック犯。バスジャックと聞いて想像するのは、大凡筋肉隆々の猛々しい若者だったりするだろう。しかしその期待を裏切り、登場するのは弱そうな老人。結局老人は敢えなく狙撃されてしまうのだが、犯人が狙撃されるまでの一連の流れに圧倒された誠は、その事件を経て大きく変化したのである。

 

誠は無気力な若者でありながら、常に何かに対して大きな不満を持っていた。社会やメディア、そして国。それらを見返そうと、誠は犯罪者になる決意をする。一体何のこっちゃと思うだろう。犯罪者になる決意ってバカバカしいにも程があると嘲笑する方も少なくないと思う。しかし、劇中のジュリーは本気なのだ。体を鍛え、原子爆弾を作成し、挙句日本政府を脅迫してしまうのである・・・。

 

という訳であらすじはここまで。

 

つまり、トンデモ映画です。かなりシュールでおバカです。そして、大笑いできるポイントが、少なくとも5シーンはあるでしょう。

 

個人的に絶対に観て欲しいのは、原爆で国を脅迫した誠の要求した内容である。

これはここでは書くまいと。実際に観て欲しい。そして大笑いして欲しい。

自分を追い込み、死すら厭わない覚悟で国を脅した男による、命を張った要求が・・・それ?

 

私は泣き笑いした。

 

そして、美しいと思った。

 

もう一つだけ内容について語らせて欲しい。

それは、見どころだ。

 

この映画は日本政府VS理科教師の壮絶な知能戦だが、もう一方では菅原文太VS沢田研二の肉弾戦でもある。

 

二人が対峙するシーンこそ、この映画最大の魅力であり、菅原文太がジュリーに向かって叫んだある一言こそ、この映画最大の見どころと言っていいだろう。

 

飛ぶぞ(長州風)!

 

ちなみに同作の原題は「The Man Who Stole the Sun」であり、これはデヴィット・ボウイが1970年に発表したアルバム「The Man Who Sold the World(世界を売った男)」に由来していると思われる。あくまで想像だが、ジュリーとボウイには接点があり、1978年にボウイが来日した際、六本木でツアーの打ち上げパーティーで二人は顔を合わせている。そもそも、ジュリーはその艶かしい出立ち(メイクバリバリでステージに立っていた)から、『日本のボウイ』の異名をとっていた程で、本人もかなりボウイを意識していたようだ。関係ないかもしれないが・・・、

 

最後になるが、細かいところまでこだわる同作は、間違いなく日本映画史に燦然と輝く元祖カルトムービーに他ならない。未見の方は絶対に一度鑑賞してみることをおすすめする。70年代に青春期を送った若者のリアルも新鮮に映るだろう。ノンポリとは何か? 無気力世代とはどんな特徴を持っているのか? などなど。

 

そして冒頭で書いた「太陽を盗んだ男」の意味だが、太陽=原爆・日本国家のダブルミーニングという訳だ。当初のプロットでは「日本を奪った男」というタイトルだったそうだが、よりシリアスでリアルな話にするべく、長谷川監督が書き直した(原案は外人さんが書いたみたいです)そうだ。

 

怪作であり傑作。シュールでありクール。

ヘンテコでありクソ真面目。

 

そんな賛辞をこの映画に送りたい。

 

そのうち、ジュリー主演のもう一本のカルト作『妖怪ハンターヒルコ』もこのブログで紹介したいと思う。久しぶりに熱量が半端ないレビューだった。。。

 

という訳で、そんな同作品の気になるおすすめ度は・・・

 

★★★★★★★★☆☆

 

星8つということで。

好みはあるだろうけど、ジュリー好きは必見です!