「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」(原題: "Leningrad Cowboys Go America")は、1989年に公開されたフィンランドとスウェーデンが共同で製作したコメディ・ロードムービー。監督は、2002年に第55回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した『過去のない男』で知られるアキ・カウリスマキによるもの。
ロシア発の架空のバンド「レニングラード・カウボーイズ」が本国を出て、アメリカでのデビューを目指す物語。彼らはアメリカのディープサウスを目指し、そこで成功を収めることを夢見ていますが、音楽的な才能よりも奇抜な外見に注目されるばかりで、中々上手くいきません。
コメディとリアルな描写を組み合わせた、奇抜な秀作。そしてこの作品こそ、同監督が世界的に注目されるきっかけとなったのです。
さて本題。
いきなり個人的な話になりますが、筆者は10年前まで音楽をやっていました。もちろんアマチュアでしたが、仕事をしながら定期的にステージに立ち、誰にウケる訳でもない三流ロックを奏でていたものです。
そしてそれよりも遥か昔、今から24、5年前は、より本格的に音楽をやっていたのですが、いわゆる売れないミュージシャンでした。CDも売れず、動員もいつだって歯抜け状態。つまり鳴かず飛ばずで結局諦めたという顛末。
そんな売れないミュージシャンがこの映画を観ると、実に共感できるポイントが多いことに気づきます。
ブッキングマネージャーの横柄な態度然り、観客の冷めた反応。売れないミュージシャンあるあるといったところでしょうか。
外見こそ彼ら(レニングラード・カウボーイズ)よりおとなしいものでしたが、グラマラス・ロックの影響をモロに露呈した奇抜なスタイルは、誰がどうみても”川崎から来たオカマ達の群”でした。
そんな僕がこの映画を観て衝撃を受けたポイントはただ一つ。
『楽曲が素晴らしい』
その一点に尽きます。
確かに笑える描写が多く、コメディ映画として非常に秀逸していると思いますが、曲の良さが際立って、肝心のコメディ要素が霞んでしまっているような気がします。まあ嬉しい誤算なのかもしれませんが。
で、この映画に登場する架空のバンド「レニングラード・カウボーイズ」は、映画の高い評価を受け、実際にその名前を冠してデビューします。元々は別の名前で活動していたようですが、映画に感化されたファン達が、同バンドでのデビューを熱望したことが理由のようです。
しかし、彼ら名義でのCDはさほど流通されておらず(とっくに廃盤になっていると思いますが)、残念ながら僕は聴いたことがありません。動画サイトなどで演奏シーンを観るのが関の山です。
現実での評価はさておき、作中のレニングラード・カウボーイズのメンバーは、貧困に喘ぐ日々を耐え忍んでいます。売れなければ食えない世界故、彼らはいつだって欲求不満の塊であり、ギャラをピンハネし続けるマネージャーとの確執が深くなっていきます。
そして・・・・・・・
あとはご自身の目で確認してみて下さい。
泣ける要素こそ皆無ですが、いつだってバカみたいに笑える同作は、憂さ晴らしにはもってこいの一本と言えるでしょう。
極端なローラー族的ないでたちは、誰しも一度はコスプレしてみたいという願望が芽生える筈(筆者だけかも・・・)。音楽が人のメンタルに与える影響の程がリアルに感じる筆者おすすめの一本です。そしてこの作品、実は第二弾も製作されていて、そちらもまた楽曲が素晴らしいです。というか、楽曲は第二弾の方が良いと思うのですがどうでしょう。
という訳で、僭越ながら「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」のおすすめ度は・・・
★★★★★★☆☆☆☆
星6つということで。