<シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| 概要>
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』4部作の4作目として、2021年3月に公開された日本のアニメーション映画。TVアニメシリーズから引き続き、庵野秀明氏が脚本・総監督を担当。同作は4部作の完結作であり、原作『新世紀エヴァンゲリオン』から26年間続いた『エヴァンゲリオン』シリーズの最終作として制作され、満を持して公開。日本における映画の歴代興行収入42位となる102.8億円(2024年4月現在)を記録。原作とは違った衝撃的な結末だった為、SNSやブログサービスでの「ネタバレ」が激しく叩かれたことでも話題になった。
ーーーー
先日、ネットニュースを見ていた際、ふと一つの記事が気になり、内容を熟読してみた。
その記事には、先日急逝した漫画家、鳥山明氏の作品を読んだことがないという某ラッパーが、その理由について懇々と書かれていた。
「天邪鬼だから手を付けなかった。しかし、いずれ読む時が来るのだろう」
中年にさしかかった男が、今から鳥山作品を読むかね?
それよりも気になったのは「天邪鬼」という言葉に尽きた。
正直、その気持ちはよくわかる。
私もハリウッド映画が大嫌いだし、マーベルシリーズとかも寒気がする程毛嫌いしている。
しかし、観たことはある。
大事なのは、否定するならまず体験すべきという点だ。
そのラッパーは別に故 鳥山氏の作品を否定していた訳ではないのだけど、理由もなくメインストリームを避けるのは、ただの気取りでしかないのでは? と思えてならない。音楽で例えるなら、ビートルズを聴かずにプロになったミュージシャン、美術ならシャガールの絵を見たことがない、抽象画を得意とする画家みたいなものだろう。
礎を知るのは、基礎学習みたいなもので、やはり触れるべき・通るべき道なのではないか? と思うのだがどうだろう。
やや前振りが長くなったが、今回は「興行収入ベスト100」の中から、鑑賞済みの作品をチョイスしている。
つまり、メインストリームの中からチョイスした格好だが、リストの中の作品達は、鑑賞したものこそいくつかあれど、語りたい作品がほとんどないのだ。
そこでチョイスしたのが42位の『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』だった。
同作品に初めて触れたのは、大学生の時だった。
学友の下宿先で夜中まで遊んでいた際、不意に放送していたその作品を何となく鑑賞したのである。
「何これ?」
はっきり言って、インパクトは薄かった。
が、しかし。
その夜に一話分丸々鑑賞した後、妙に気になった為、翌週から毎回録画するようになったという。
さらに原作も読み始めてしまうと、一気にその世界に没頭してしまったという経緯がある。
ーーー
TV放送が終わり、映画化され、ひとまずの完結を迎えた同作は、他に類を見ない名作として祭り上げられ、放送・連載が終わった後も、その人気を不動のものとした。
そして2007年9月、ロクに内容も公表されないまま「新劇場版」として公開されたのだった。
庵野監督は同作を「リビルドする」と語り、全4部で構成すると発表。
何とこれは凄いことになったと、ワクワクしながら1作目の「序」を鑑賞しに行ったのだが・・・単なる焼き直しだったことに失望し、何だか詐欺に遭った気分で帰ったあの晩のことは忘れない。
次作の「破」が公開されたのは、それから約2年後のこと。
どうせアニメの焼き直しだろうと、今回こそはスルーしようと決め込んだものの、世間の評価がやや違う。単なる続きではない。アニメとは話が異なる。といったレビューを見るや否や、たまらず劇場に飛び込んでみたところ・・・何ともコレが面白かった。マリって誰よ? と、冒頭から登場する新キャラに驚きつつ、出てくる使徒こそ同じであれ、アニメとは全く異なるストーリーに感嘆した。
これはもう次作も観るしかないと決め込み、待つこと実に3年。遂に上映された三作目「Q」は、もうかつてのエヴァの筋書きとは全く異なる内容であり、ニアサードインパクトから14年後の世界において繰り広げられる抑揚と意外性に満ちた展開に、鼻息を荒くしてスクリーンを凝視したものだった。
ひとまずここまで。
新劇場版の面白さは、あるポイントから一気に本線を逸脱し、丸っきり新しいストーリーを描いている点に尽きる。さらに、美しいアニメーションと宇多田ヒカルの音楽が文字通りシンクロする纏まりに、思わず内蔵が浮く程の高揚感を得られるあたりが堪らない。
し・か・し。
そこからがスタジオカラーの酷さだろう。
言うなれば「やるやる詐欺」。
4部作の完結となる「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」が公開されたのは、前作から9年という長すぎるインターバルをおいたのである。
よもや前作までのストーリーも忘れ、劇場公開された時にはすっかり熱も覚めてしまった為、劇場ヘ足が向くことはなかったのである。
確かに面白いシリーズだったし、エヴァの世界を現代の技術と新たなシナリオを用いて再構築した努力と工夫は認めたい。しかし些か時間が空きすぎた。
確かに公開時は話題になったし、SNSでも同作を賞賛する声で溢れたが、何となく観たくなかったのである。
という訳で、私は初めて同作を鑑賞したのは昨年のことだ。
しかも、DVDでもリバイバル上映でもなく、サブスクを利用し、スマホの小さな画面で「何となく」鑑賞したのである。
ネタバレしないよう、詳しいことは一切書かないが、鑑賞後にまず思ったのは、この作品を劇場に観なかった自分に腹が立ったことに尽きる。正直、良作だと思った。これまで、TVアニメと劇場版で見せたどの完結よりも、同シリーズの結びが最もわかりやすく美しく、それでいて納得することができた。
ただ一つ思うのは、原作を読んだ方が感動が大きいということだ。
私は幸運にも原作を最後まで読んでいたので、同作の結びに合点がいったのだけど、未読の方は「は?」と思ったかもしれない。
好き勝手に作品をいじくりまわしたように見えて、最後はしっかりと原作に敬意を払った庵野監督の紳士的な行動は素晴らしいと思う。何より、TVアニメやこれまでの劇場版で表現できなかったような抽象的かつ美しい表現の数々が素晴らしく、実写との融合も見事で、感動のあまりエンドロールでフリーズしてしまった。
実際のところはわからないし、芯を食った発言どころか、アテ違いの勘違い野郎なのかもしれないが、同作は極上のタイムスリップモノだったと解釈している。
シンジくん、良かったな。
おそらくこの先、何回も鑑賞する作品なのだろうけど、初見の衝撃は忘れないだろうな。
という訳で、そんな同作品の気になるおすすめ度は・・・
★★★★★★★★☆☆
星8つということで。
低評価が多い作品ですが、私にはとても面白かったです。
さすが42位!