映画と僕。

暇さえあれば映画ばかり観ているノーフューチャーな中年男性による簡易レビューです。好みが偏っているので、できるだけ色々な作品のレビューを書こうと思っていますが、中々難しいかもしれません。

★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 皮ジャン反抗族(1978/日本)

<皮ジャン反抗族 概要>

1978年東映セントラルフィルム製作、東映配給、長谷川安春監督によるバイオレンス映画。主演の舘ひろしは、同作が初の単独主演となった。キャッチコピーは「暴走する若者たちの理由なき挑戦」。同時上映は松田優作主演の「殺人遊戯」。

 

目的もなく大都会に群がる若者たちのやり場のない怒りと憎しみ、欲望を、70年代という時代背景の中に描き出した意欲作。優しくて荒々しい、硬派な不良を舘ひろしが好演。

 

ーーーー

 

私が生まれ育った神奈川県川崎市という場所は、全国屈指の治安が悪い町として知られていた。幼少期はよくわからなかったが、中学生くらいになると我が街の荒れっぷりを肌で感じることができた。

 

何せ、校舎の屋上から紙パックの牛乳が落ちてくるのである。

 

下を歩く生徒に向けて屋上から牛乳ダーツを楽しんでいるのは、「ろくでなしBLUES」ヨロシクのリーゼントパーマを施した低脳集団達。

 

さらに、母校の窓ガラスの80%は割れていたと記憶している。

そのまたさらに、私が在籍していた野球部の備品の中で、稀に武器と化すバイオレンスなアイテム「金属バット」がたまに数本部室から盗まれるという事件が起きていたりもしたものだ。

 

どノーマルな私にとって、そんな阿呆と共に過ごす中学三年間は、本当にくだらない時間だったと記憶しているし、いわゆる”不良”が余計嫌いになってしまった。

 

そんな私が今回チョイスしたのが不良が主役のバイオレンス・ムービー『皮ジャン反抗族』である。

 

無論、初見だ。

このブログのネタとして観てみようかなと。

それに主演が舘ひろしという点も大きい。

 

何せあの『セクシー鷹山』を演じた氏の初主演映画である。

一度観ても損はあるまいと。

 

結果、時間が勿体なかったなぁと思ったのですが。。。

 

 

ーーーー

 

 

主人公は、自動車工場に住み込みで働く若者。

バイクとディスコ通いを趣味とするものの、他人と関わるのが滅法苦手な硬派。

それなのに、女性を見ると盛りがついてサルと化す、わかりやすいティーンエイジャーである。

 

簡単に書こう。

舘ひろし演じるそのヤンキーが、様々なトラブルに巻き込まれ、最終的には”勘違い”で殺されて終了。

 

2時間かけて語られてきた数々のエピソードは一体何の意味があったのか? 

と、驚きのあまりエンドロールでしばし固まってしまったことは言うまでもない。

 

結局、この映画は何を表現したかったのかが全くわからず、稲中のギャグで使われていたタイトルというだけで観てしまった方は、本当に後悔しているのだろうなと。

 

これが本当の時間泥棒。

テーマに据えた「若者の理由なき挑戦」というより「理由なき物語」だったな。

 

しかし「皮ジャン」って書く? 「革ジャン」じゃないのか?

って思った方、自分以外にもいると思うのだがどうだろう。

 

 

という訳で、そんな同作品の気になるおすすめ度は・・・

 

★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

星1つということで。

 

スーパーでレジの店員に白いバラを渡す客なんかいないって。。。

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★★★★★★★★☆☆ シン・エヴァンゲリオン劇場版:||(2021/日本)

<シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| 概要>

ヱヴァンゲリヲン新劇場版』4部作の4作目として、2021年3月に公開された日本のアニメーション映画。TVアニメシリーズから引き続き、庵野秀明氏が脚本・総監督を担当。同作は4部作の完結作であり、原作『新世紀エヴァンゲリオン』から26年間続いた『エヴァンゲリオン』シリーズの最終作として制作され、満を持して公開。日本における映画の歴代興行収入42位となる102.8億円(2024年4月現在)を記録。原作とは違った衝撃的な結末だった為、SNSやブログサービスでの「ネタバレ」が激しく叩かれたことでも話題になった。

 

ーーーー

 

先日、ネットニュースを見ていた際、ふと一つの記事が気になり、内容を熟読してみた。

その記事には、先日急逝した漫画家、鳥山明氏の作品を読んだことがないという某ラッパーが、その理由について懇々と書かれていた。

 

「天邪鬼だから手を付けなかった。しかし、いずれ読む時が来るのだろう」

 

中年にさしかかった男が、今から鳥山作品を読むかね?

それよりも気になったのは「天邪鬼」という言葉に尽きた。

 

正直、その気持ちはよくわかる。

私もハリウッド映画が大嫌いだし、マーベルシリーズとかも寒気がする程毛嫌いしている。

しかし、観たことはある。

 

大事なのは、否定するならまず体験すべきという点だ。

 

そのラッパーは別に故 鳥山氏の作品を否定していた訳ではないのだけど、理由もなくメインストリームを避けるのは、ただの気取りでしかないのでは? と思えてならない。音楽で例えるなら、ビートルズを聴かずにプロになったミュージシャン、美術ならシャガールの絵を見たことがない、抽象画を得意とする画家みたいなものだろう。

 

礎を知るのは、基礎学習みたいなもので、やはり触れるべき・通るべき道なのではないか? と思うのだがどうだろう。

 

やや前振りが長くなったが、今回は「興行収入ベスト100」の中から、鑑賞済みの作品をチョイスしている。

 

つまり、メインストリームの中からチョイスした格好だが、リストの中の作品達は、鑑賞したものこそいくつかあれど、語りたい作品がほとんどないのだ。

 

そこでチョイスしたのが42位の『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』だった。

 

同作品に初めて触れたのは、大学生の時だった。

学友の下宿先で夜中まで遊んでいた際、不意に放送していたその作品を何となく鑑賞したのである。

 

「何これ?」

 

はっきり言って、インパクトは薄かった。

 

が、しかし。

その夜に一話分丸々鑑賞した後、妙に気になった為、翌週から毎回録画するようになったという。

 

さらに原作も読み始めてしまうと、一気にその世界に没頭してしまったという経緯がある。

 

 

ーーー

 

 

TV放送が終わり、映画化され、ひとまずの完結を迎えた同作は、他に類を見ない名作として祭り上げられ、放送・連載が終わった後も、その人気を不動のものとした。

 

そして2007年9月、ロクに内容も公表されないまま「新劇場版」として公開されたのだった。

 

庵野監督は同作を「リビルドする」と語り、全4部で構成すると発表。

何とこれは凄いことになったと、ワクワクしながら1作目の「序」を鑑賞しに行ったのだが・・・単なる焼き直しだったことに失望し、何だか詐欺に遭った気分で帰ったあの晩のことは忘れない。

 

次作の「破」が公開されたのは、それから約2年後のこと。

どうせアニメの焼き直しだろうと、今回こそはスルーしようと決め込んだものの、世間の評価がやや違う。単なる続きではない。アニメとは話が異なる。といったレビューを見るや否や、たまらず劇場に飛び込んでみたところ・・・何ともコレが面白かった。マリって誰よ? と、冒頭から登場する新キャラに驚きつつ、出てくる使徒こそ同じであれ、アニメとは全く異なるストーリーに感嘆した。

 

これはもう次作も観るしかないと決め込み、待つこと実に3年。遂に上映された三作目「Q」は、もうかつてのエヴァの筋書きとは全く異なる内容であり、ニアサードインパクトから14年後の世界において繰り広げられる抑揚と意外性に満ちた展開に、鼻息を荒くしてスクリーンを凝視したものだった。

 

ひとまずここまで。

新劇場版の面白さは、あるポイントから一気に本線を逸脱し、丸っきり新しいストーリーを描いている点に尽きる。さらに、美しいアニメーションと宇多田ヒカルの音楽が文字通りシンクロする纏まりに、思わず内蔵が浮く程の高揚感を得られるあたりが堪らない。

 

し・か・し。

 

そこからがスタジオカラーの酷さだろう。

 

言うなれば「やるやる詐欺」。

 

4部作の完結となる「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」が公開されたのは、前作から9年という長すぎるインターバルをおいたのである。

 

よもや前作までのストーリーも忘れ、劇場公開された時にはすっかり熱も覚めてしまった為、劇場ヘ足が向くことはなかったのである。

 

確かに面白いシリーズだったし、エヴァの世界を現代の技術と新たなシナリオを用いて再構築した努力と工夫は認めたい。しかし些か時間が空きすぎた。

 

確かに公開時は話題になったし、SNSでも同作を賞賛する声で溢れたが、何となく観たくなかったのである。

 

という訳で、私は初めて同作を鑑賞したのは昨年のことだ。

しかも、DVDでもリバイバル上映でもなく、サブスクを利用し、スマホの小さな画面で「何となく」鑑賞したのである。

 

ネタバレしないよう、詳しいことは一切書かないが、鑑賞後にまず思ったのは、この作品を劇場に観なかった自分に腹が立ったことに尽きる。正直、良作だと思った。これまで、TVアニメと劇場版で見せたどの完結よりも、同シリーズの結びが最もわかりやすく美しく、それでいて納得することができた。

 

ただ一つ思うのは、原作を読んだ方が感動が大きいということだ。

私は幸運にも原作を最後まで読んでいたので、同作の結びに合点がいったのだけど、未読の方は「は?」と思ったかもしれない。

 

好き勝手に作品をいじくりまわしたように見えて、最後はしっかりと原作に敬意を払った庵野監督の紳士的な行動は素晴らしいと思う。何より、TVアニメやこれまでの劇場版で表現できなかったような抽象的かつ美しい表現の数々が素晴らしく、実写との融合も見事で、感動のあまりエンドロールでフリーズしてしまった。

 

実際のところはわからないし、芯を食った発言どころか、アテ違いの勘違い野郎なのかもしれないが、同作は極上のタイムスリップモノだったと解釈している。

 

シンジくん、良かったな。

 

おそらくこの先、何回も鑑賞する作品なのだろうけど、初見の衝撃は忘れないだろうな。

 

という訳で、そんな同作品の気になるおすすめ度は・・・

 

★★★★★★★★☆☆

 

星8つということで。

低評価が多い作品ですが、私にはとても面白かったです。

さすが42位!

★★★★★★★★☆☆ 太陽を盗んだ男(1979/日本)

太陽を盗んだ男 概要>

1979年に公開された、長谷川和彦監督によるカルト映画。話は1970年代後半、高度経済成長期の末期を迎えた日本を舞台に、政治やメディア、個人の孤独や欲望などについて深く掘り下げ、さらに核兵器やテロといった重いテーマを据えている。公開後は各所で絶賛され、数々の映画賞を受賞したが、テロやバスジャック、さらには核兵器などを扱っていることから、ビデオが廃盤になるなど、長らく視聴が難しい時期があった程。

 

しかし後年になると同作を支持する層が増え『キネマ旬報』1999年「映画人が選んだオールタイムベスト100」日本映画篇では13位、2009年「オールタイム・ベスト映画遺産200(日本映画編)」〈日本映画史上ベストテン〉では歴代第7位に選ばれると、『キネマ旬報』2018年8月上旬号「1970年代日本映画ベスト・テン」では『仁義なき戦い』を逆転し、第1位に選ばれている。日本映画史に残る名作の一つと言っても過言ではない。

 

ーーーー

 

いきなりだが、私はジュリーこと、沢田研二の大ファンである。

しかし今のジュリーには全く興味がなく、あくまで超人気歌手として君臨していた70年代のジュリーに限定するが。

 

そしてもちろん、「太陽を盗んだ男」も50回以上鑑賞しており、早稲田松竹で「暴力教室(舘ひろし)」との二本立てを見た時は震える程感動したものだ。何せ巨大なスクリーンで憧れのジュリーを堪能できたのは、本当に貴重な経験だった。

 

で、肝心なことを話そう。タイトルだけでは全く想像できないと思うが、一体この作品はどんな内容なのか?「太陽を盗む」とは、一体どんな意味なのか?

 

話は、ジュリー扮する中学の理科教師、城戸誠が生徒を連れて社会科見学へ行くところから始まる。今では考えられないことだが、その行き先は何と「原子力発電所」。そしてその見学を終えた帰り、何と誠たちはバスジャックに遭ってしまうのである・・・・。

 

笑うのは、そのバスジャック犯。バスジャックと聞いて想像するのは、大凡筋肉隆々の猛々しい若者だったりするだろう。しかしその期待を裏切り、登場するのは弱そうな老人。結局老人は敢えなく狙撃されてしまうのだが、犯人が狙撃されるまでの一連の流れに圧倒された誠は、その事件を経て大きく変化したのである。

 

誠は無気力な若者でありながら、常に何かに対して大きな不満を持っていた。社会やメディア、そして国。それらを見返そうと、誠は犯罪者になる決意をする。一体何のこっちゃと思うだろう。犯罪者になる決意ってバカバカしいにも程があると嘲笑する方も少なくないと思う。しかし、劇中のジュリーは本気なのだ。体を鍛え、原子爆弾を作成し、挙句日本政府を脅迫してしまうのである・・・。

 

という訳であらすじはここまで。

 

つまり、トンデモ映画です。かなりシュールでおバカです。そして、大笑いできるポイントが、少なくとも5シーンはあるでしょう。

 

個人的に絶対に観て欲しいのは、原爆で国を脅迫した誠の要求した内容である。

これはここでは書くまいと。実際に観て欲しい。そして大笑いして欲しい。

自分を追い込み、死すら厭わない覚悟で国を脅した男による、命を張った要求が・・・それ?

 

私は泣き笑いした。

 

そして、美しいと思った。

 

もう一つだけ内容について語らせて欲しい。

それは、見どころだ。

 

この映画は日本政府VS理科教師の壮絶な知能戦だが、もう一方では菅原文太VS沢田研二の肉弾戦でもある。

 

二人が対峙するシーンこそ、この映画最大の魅力であり、菅原文太がジュリーに向かって叫んだある一言こそ、この映画最大の見どころと言っていいだろう。

 

飛ぶぞ(長州風)!

 

ちなみに同作の原題は「The Man Who Stole the Sun」であり、これはデヴィット・ボウイが1970年に発表したアルバム「The Man Who Sold the World(世界を売った男)」に由来していると思われる。あくまで想像だが、ジュリーとボウイには接点があり、1978年にボウイが来日した際、六本木でツアーの打ち上げパーティーで二人は顔を合わせている。そもそも、ジュリーはその艶かしい出立ち(メイクバリバリでステージに立っていた)から、『日本のボウイ』の異名をとっていた程で、本人もかなりボウイを意識していたようだ。関係ないかもしれないが・・・、

 

最後になるが、細かいところまでこだわる同作は、間違いなく日本映画史に燦然と輝く元祖カルトムービーに他ならない。未見の方は絶対に一度鑑賞してみることをおすすめする。70年代に青春期を送った若者のリアルも新鮮に映るだろう。ノンポリとは何か? 無気力世代とはどんな特徴を持っているのか? などなど。

 

そして冒頭で書いた「太陽を盗んだ男」の意味だが、太陽=原爆・日本国家のダブルミーニングという訳だ。当初のプロットでは「日本を奪った男」というタイトルだったそうだが、よりシリアスでリアルな話にするべく、長谷川監督が書き直した(原案は外人さんが書いたみたいです)そうだ。

 

怪作であり傑作。シュールでありクール。

ヘンテコでありクソ真面目。

 

そんな賛辞をこの映画に送りたい。

 

そのうち、ジュリー主演のもう一本のカルト作『妖怪ハンターヒルコ』もこのブログで紹介したいと思う。久しぶりに熱量が半端ないレビューだった。。。

 

という訳で、そんな同作品の気になるおすすめ度は・・・

 

★★★★★★★★☆☆

 

星8つということで。

好みはあるだろうけど、ジュリー好きは必見です!

★★★☆☆☆☆☆☆☆ ネバーエンディング・ストーリー(1984/ドイツ・アメリカ)

ネバーエンディング・ストーリー 概要>

西ドイツとアメリカで共同制作されたファンタジー作品で、公開は1984年。ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」を原作とし、ストーリーはもちろん、キャッチーなテーマソングと映像美で日本でも人気を博した。いじめられっ子の少年バスチアンと、彼が読む本の中の物語が交差。バスチアンが手にした本には、神秘的なファンタジーの世界「ファンタジア」を舞台に、王女の命を救うため、少年アトレイユが冒険する様が書かれている。

 

ーーーー

 

指輪物語ハリー・ポッター等、世の子供を魅了したファンタジー作品の礎とも言うべきこの物語は、ミヒャエル・エンデによる同名の人気作品を満を持して映画化し、期待通りに世界中で大ヒットを記録している。

 

かく言うこの私も、小学校低学年の頃、母に連れられて渋谷の映画館で鑑賞しているのである。

正直、売れ線を意識しまくったテーマ曲と、ファルコンの顔が怖すぎるという印象しか残っていないが、小学校高学年になってからこの原作を読んで驚愕したのを鮮明に覚えている。

 

足りないのだ。

 

出てくるキャラや描写はもちろんだが、この映画は「はてしない物語」の半分も語られていないのである。故に終わり方も原作とは全く異なっている。

 

いやこれ、本当にいいの? と思ったが、やはり原作者はこの映画に相当憤慨していたようで、作品を汚されたといった意味合いの罵声を吐いたそうな。そりゃそうだよな。話の途中でブツ切られているのだから、怒るのもわかる。

 

しかしながらこの映画、制作費が相当高かったようで、特殊効果や映像美といった部分では非常に頑張っているのがわかる。ヒットぶりを見る限り、おそらく制作費は十二分に回収できていると思われるが、原作のファンからすれば冒涜された気になってもおかしくはないだろうと。ハリー・ポッター指輪物語(コチラは結構批判が出たが・・・)は優秀だったと言わざるを得ない。

 

どの程度中途半端なのか? 映画を観た方ならわかると思うが、石の魔人やカタツムリに乗った紳士、さらにはコウモリ男の存在って何の意味があったのだろうか・・・?と首を傾げた方も多いでしょう。主要キャラだと思いきや、最初と最後にチョロっと登場するだけという粗末な扱われ方をされているのですが、原作ではもっといっぱい登場します。荒い。本当に荒いです。

 

AOR調の優しくて美しいテーマソングで誤魔化しても無駄だ。

全然ネバーエンディングじゃないし。。。

 

ちなみに、ファルコンが飛んでいく様を背後から映しているショットは、宇宙刑事ギャバンがサイバリアン(赤いサイドカー)に乗って異世界へ行く様にそっくりなのが笑えた。小生は韓国焼酎を飲みながら、腹を抱えて笑いながら観てしまった。

 

色々と不満を書いてしまったが、きっと子供にとっては印象深い作品なのかなと思う。ファルコンに乗って大空を駆け巡りたいなんて空想を描く子もいるだろうし、ファンタジー感溢れる世界を冒険する様などは、男の子の好奇心をくすぐりまくるのではなかろうかとも思う。何を隠そうこの私も、アトレイユのロン毛っぷりを見て、大きくなったら僕も髪を伸ばそうなんて思ったものだった。今でもロン毛なのはそのせいか? と聞かれたら、単に髪を切る金がないからだと言っておこう。事実だ。

 

で、肝心な評価なのですが、原作ありきの作品と考えると微妙だなと。原作は大人が読んでも面白いので、できれば原作に忠実な形で撮り直してくれないかなと思う。無論、バスティアンはキャッチャーライクな少年をキャスティングしてね。さらに、りんごじゃなくてドリトスのパーティ・パックとケンタッキーフライドチキンをガツ食いしながら、フィギュアだらけの寝室で寝転がりながら、古本屋からパクった「はてしない物語」を読んでいたら満点だな。おっと、ペプシ・コーラも欠かせない。

 

しかし、本についている紋章とアトレイユが首から下げている紋章の意味、映画を観ただけじゃわからないよなぁ。。本当に雑な・・・・。

 

という訳で、そんな同作品の気になるおすすめ度は・・・

 

★★★☆☆☆☆☆☆☆

 

星3つということで。

もっと原作に忠実な形で映画化してほしかった。。。

★★★★☆☆☆☆☆☆ 正欲(2023/日本)

<正欲 概要>

とある理由によって、世間との関わりを断絶して生きている三人の男女。そして、不登校の息子を持つ検察官。年齢も生活する場も異なる個々が、ある事件によって意図せず交錯していく。人間が持つ「欲」と「趣向」。ノーマルとアブノーマル、もしくはマジョリティとマイノリティ。正解の無いそれに踏み込み、特殊な性癖を持つ者が、どれほど生きにくいのかを描いた問題作。直木賞受賞作家である朝井リョウ氏の原作を映画化した一作。

 

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いきなり酷評してしまいますが、文学を映像化する難しさを思い切り露呈した作品です。世間では中々評判が良く、面白い!なんてレビューも見かけますが、正直「どこが?」と思ってしまいます。

 

原作が持つ独特の空気感が全く表現されておらず、これ、作者はOKしたのかな? と首を傾げてしまいたくなる程でした。まだ割と新しい作品なので、ネタバレしないように曖昧な書き方をしてしまいますが、単純に言いうと「特殊性癖」、つまりフェチズムがテーマになっています。

 

「俺は女性の胸が好き」という方もいれば、「男性の上腕二頭筋だけ触れたらそれでいい」という女性もいるでしょう。そしてこの映画で言う「それ」はズバリ『水』です。は?ってなる人もいると思いますが、正確に言うと「水に濡れる様」に異常な興奮を覚えるという特殊な癖を持つ方々のお話です。

 

そんな彼らにとって、他者との調和は難しく、拒絶・逃避することで世間との断絶を図ろうとするが・・・・ってところであらすじストップ。いかんいかん。答えを書いてしまいそうだ。

 

誰しも、大小関わらず他人に理解されない「癖」を持っているものです。とは言え、私は別段そういった特殊な「癖」を持っておらず、敢えて言うなれば痩せていて背が高く、胸の小さな女性にしか心がときめかないといった程度かなと。なのでモデルさんが好きです。

 

生きるのが難しい程の癖を持っている方にとって、この映画は正に言い得て妙なのかもしれませんが、その気持ちがわからない人間からすると、ああ、世の中には変わった人もいるもんだな。で終わります。そしてもちろん共感もできません。

 

ではこの映画は観るに値しないのか? と聞かれたら、男性は観た方が良いと言っておきましょう。但し、多少なりともガッキーが可愛いと思っている方限定です。つまりこの映画、ガッキーが良いです。ほぼスッピンの状態の彼女だったり、地味なのにセクシーだったり、意味もなくずぶ濡れだったりと、未知のガッキーを見ることができます。

 

しかしながらこの映画の宣伝に少々文句を言いたいのだけど、メインキャストは稲垣吾郎×新垣結衣とされているのですが、稲垣吾郎より、磯村勇斗を立てるべきじゃないのかな・・・と思うのだがどうだろう。確かに稲垣吾郎のポジションは重要だし、何より稲垣吾郎がガッキーと交わるのが物語のキーになるとは思うのだが、そこに磯村も加えるべきじゃないかなと。まあガッキーが目立ってりゃいいか。

 

という訳で、ガッキー好きは必見です。

 

ガッキーと磯村の⚪︎⚪︎⚪︎ごっこも必見です。

いーそーむぅーらぁぁぁああー!!!!と怒ってしまう方もいると思います。

 

そんな同作品の気になるおすすめ度は・・・

 

★★★★☆☆☆☆☆☆

 

星4つということで。

正直好みではなかった。。

★★★★★★★☆☆☆ 夢 (1990/日本・アメリカ)

<夢 概要>

同作は8つの物語から構成されており、それぞれに夢と現実、生と死、自然と人間の関係など、深いテーマを探求。個々に独特の映像美や物語性、そして日本の伝統や文化を反映したものをオムニバスにして一本にまとめ、世界的に注目された作品。興業面では、映画監督であるスティーブン・スピルバーグ氏の協力を元に、初となる世界配給を実現させた一作である。抽象的な表現が多く、往年のクロサワファンの中には毛色の違う作品として一線を引いている方も少なくない。

 

ーーーー

 

という訳で、次に持ってきたのは世界のクロサワであり、氏が残した数々の名作の中でも、最も賛否が分かれる「夢」をチョイスしてみました。

 

私にとってのクロサワ映画は、明確なストーリーこそあれど、色をも想像させる深さを纏った不思議な魅力を持つ白黒映画という印象。その印象において同作が映し出す絵は軒並み現代であり、カラーである。

 

正直に言うと、最初に観た時は全く意味がわかりませんでした。

何せ初見は私が中学2年生の頃。まあ映像がキレイだなぁくらいの感想しかなかったと思います。

 

無論、大人になってからは何度も鑑賞したのですが、作品の意図みたいなものはいつまで経ってもぼやけたままです。モチーフは夏目漱石の「夢十夜」であると思われ、話の切れ目に登場する「こんな夢を見た」というフレーズは、氏へのオマージュなのだろうと想像する。

 

8編の作品はどれもメッセージ性が強く、冒頭で紹介したように、生と死や人間に対する警告などが表現されており、特に6話の「赤富士」は利便性と権威の象徴である核に対する皮肉に満ちた内容であり、環境汚染に無頓着な現代人はいずれそうなるという強烈な警告になっている。

 

まあ夢というにはやや話が長いような気もするが、とにかく映像美とシュールな展開に引き込まれ、毎度の如くあっという間に終わってしまうという。

 

話によっては特殊効果を使っているみたいなのですが、例えばカラスの大群を実際に使っていたり、エキストラを1300人も出していたりと、スケールの大きさは半端ないです。それもわざとらしくなく、自然な感じになっているので、観終えた後に思い返してため息が出るというね。

 

それと、それに付随してロケ地の美しさたるや、もう本当に感嘆するレベルです。結構有名だと思うのですが、5話の「鴉」に出てくる大空町の「メルヘンの丘」は日本とは思えないくらい幻想的な風景で、死ぬまでに一度は行ってみたいと思ったものです。とにかくクロサワ映画の醍醐味は自然の景観だと思っている私は、きっと映画の見方を間違えているのでしょう。

 

一人で物思いに耽りたい夜にピッタリの一本だと思うのですがどうでしょうか?

 

そんな同作品の気になるおすすめ度は・・・

 

★★★★★★★☆☆☆

 

7つということで。

ABEMAの公式サイトはこちらから

★★★★★★☆☆☆☆ キッドナップ・ブルース (1982/日本)

<キッドナップブルース概要>

1982年に公開された浅井慎平監督によるロードムービー。VHS化こそされたものの、倫理面で問題ありと判断され、当分DVD化はされなかった。2008年にようやくDVDで発売。監督を務めた写真家の浅井慎平が4役を一人でこなした他、主演のタモリを含め淀川長治伊丹十三渡辺文雄所ジョージ、川谷拓三、桃井かおりなど、出演者がやたらと豪華であることも話題をさらった。さらに、ピアニストである山下洋輔が出演し、素晴らしいピアノ演奏を披露しているあたりも見逃せない。

 

一人寡の中年男性(タモリ)が、近所に住む顔見知りの少女と一緒に海を目指すところから始まるが、別段ストーリーはない。長い間DVD化されなかった理由は、少女誘拐とも取れるその内容だったと言われているが、そもそもタイトルが「キッドナップ(子供誘拐)」であるため、規制するも何もタイトルからしてまずNGだったという顛末。

 

 

さて本題。

 

 

『そもそも、浅井慎平ってカメラマンじゃなかったっけ?』

カメラマン兼「クイズ ヒントでピント」でよく当てる回答者という印象しかなかった氏が映画を撮っている事実に興味を持って視聴。

 

絶対に面白くないと思って観ていたのだが、終わってみたらまあそこそこだったのかなと。

とにかく出演者の芝居が酷い。特にタモリ山下洋輔。完全に素人芝居であり、ホームビデオで身内の何気ない会話を撮影しただけみたいなクオリティーのシーンが多く、序盤は観るに耐えない箇所ばかりだったが、次第に話の内容に取り込まれ、最終的はまあ良かったのかなと。

 

冒頭にも書きましたが、とにかく出演者が凄いです。

伊丹十三は夫妻で出演しているし、若かりし頃の竹下景子は超美人。所ジョージも髪の毛が豊富だし、淀川長治に至っては、しゃべっていることが理解できるレベルの発音ができている時点で驚いたものだ。

 

見どころは、やはり少女とタモリの掛け合いであり、二人の関係性である。

少女の「海が見たい」という発言から始まったその旅は、明確で大きな事件こそないものの、旅に付き物の小さなトラブルがいくつも発生する。

 

最初は素人臭い芝居で見苦しいと思っていたものの、近所に住む女の子が、まるで血を分けた親子であるかのような身近な存在になっていく様を観ると、つい世の中にはこうやって誤解された誘拐事件もあるのかもしれないな何て思ってしまった。

 

旅を続けるうちに、擬似親子の二人旅は、社会を巻き込んでいく。

行く場所には指名手配と尋ね人のポスターがセットで貼られ、飄々としていたタモリの胸中も、段々と変わっていく様が伝わってくる。

 

浅井慎平がなぜこのキャスティングにしたのか?

観ていくうちに気づくのはその一点だ。

 

自主制作レベルの低クオリティなロードムービーかと思っていたが、観た後にはロードムービーの本質に迫っている気がして、何とも複雑な気分になったものだ。

 

そう言えば、この作品の制作費はわずか1,000万円だったそうで、主演のタモリはノーギャラで出演している可能性があることから、他の豪華キャストも同様の条件で出演していると考えられる。でも、このメンバーが全員ノーギャラって、浅井慎平ってどれだけのカリスマだよ?って話ですよね。しかもテーマ曲の作詞作曲は桑田佳祐だし。。。それもノーギャラなのかぁ。

 

とにかくロードムービーが好きな人は一見の価値アリです。

今なら、U-NEXT他、動画配信サービスでもご視聴可能。

 

そんな同作品の気になるおすすめ度は・・・

 

★★★★★★☆☆☆☆

 

6つということで。

ABEMA