映画と僕。

暇さえあれば映画ばかり観ているノーフューチャーな中年男性による簡易レビューです。好みが偏っているので、できるだけ色々な作品のレビューを書こうと思っていますが、中々難しいかもしれません。

★★★★★★☆☆☆☆ キッドナップ・ブルース (1982/日本)

<キッドナップブルース概要>

1982年に公開された浅井慎平監督によるロードムービー。VHS化こそされたものの、倫理面で問題ありと判断され、当分DVD化はされなかった。2008年にようやくDVDで発売。監督を務めた写真家の浅井慎平が4役を一人でこなした他、主演のタモリを含め淀川長治伊丹十三渡辺文雄所ジョージ、川谷拓三、桃井かおりなど、出演者がやたらと豪華であることも話題をさらった。さらに、ピアニストである山下洋輔が出演し、素晴らしいピアノ演奏を披露しているあたりも見逃せない。

 

一人寡の中年男性(タモリ)が、近所に住む顔見知りの少女と一緒に海を目指すところから始まるが、別段ストーリーはない。長い間DVD化されなかった理由は、少女誘拐とも取れるその内容だったと言われているが、そもそもタイトルが「キッドナップ(子供誘拐)」であるため、規制するも何もタイトルからしてまずNGだったという顛末。

 

 

さて本題。

 

 

『そもそも、浅井慎平ってカメラマンじゃなかったっけ?』

カメラマン兼「クイズ ヒントでピント」でよく当てる回答者という印象しかなかった氏が映画を撮っている事実に興味を持って視聴。

 

絶対に面白くないと思って観ていたのだが、終わってみたらまあそこそこだったのかなと。

とにかく出演者の芝居が酷い。特にタモリ山下洋輔。完全に素人芝居であり、ホームビデオで身内の何気ない会話を撮影しただけみたいなクオリティーのシーンが多く、序盤は観るに耐えない箇所ばかりだったが、次第に話の内容に取り込まれ、最終的はまあ良かったのかなと。

 

冒頭にも書きましたが、とにかく出演者が凄いです。

伊丹十三は夫妻で出演しているし、若かりし頃の竹下景子は超美人。所ジョージも髪の毛が豊富だし、淀川長治に至っては、しゃべっていることが理解できるレベルの発音ができている時点で驚いたものだ。

 

見どころは、やはり少女とタモリの掛け合いであり、二人の関係性である。

少女の「海が見たい」という発言から始まったその旅は、明確で大きな事件こそないものの、旅に付き物の小さなトラブルがいくつも発生する。

 

最初は素人臭い芝居で見苦しいと思っていたものの、近所に住む女の子が、まるで血を分けた親子であるかのような身近な存在になっていく様を観ると、つい世の中にはこうやって誤解された誘拐事件もあるのかもしれないな何て思ってしまった。

 

旅を続けるうちに、擬似親子の二人旅は、社会を巻き込んでいく。

行く場所には指名手配と尋ね人のポスターがセットで貼られ、飄々としていたタモリの胸中も、段々と変わっていく様が伝わってくる。

 

浅井慎平がなぜこのキャスティングにしたのか?

観ていくうちに気づくのはその一点だ。

 

自主制作レベルの低クオリティなロードムービーかと思っていたが、観た後にはロードムービーの本質に迫っている気がして、何とも複雑な気分になったものだ。

 

そう言えば、この作品の制作費はわずか1,000万円だったそうで、主演のタモリはノーギャラで出演している可能性があることから、他の豪華キャストも同様の条件で出演していると考えられる。でも、このメンバーが全員ノーギャラって、浅井慎平ってどれだけのカリスマだよ?って話ですよね。しかもテーマ曲の作詞作曲は桑田佳祐だし。。。それもノーギャラなのかぁ。

 

とにかくロードムービーが好きな人は一見の価値アリです。

今なら、U-NEXT他、動画配信サービスでもご視聴可能。

 

そんな同作品の気になるおすすめ度は・・・

 

★★★★★★☆☆☆☆

 

6つということで。

ABEMA