映画と僕。

暇さえあれば映画ばかり観ているノーフューチャーな中年男性による簡易レビューです。好みが偏っているので、できるだけ色々な作品のレビューを書こうと思っていますが、中々難しいかもしれません。

★★★★★★☆☆☆☆ レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ(1989/フィンランド・スウェーデン共同製作)

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ概要>

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」(原題: "Leningrad Cowboys Go America")は、1989年に公開されたフィンランドスウェーデンが共同で製作したコメディ・ロードムービー。監督は、2002年に第55回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した『過去のない男』で知られるアキ・カウリスマキによるもの。

 

ロシア発の架空のバンド「レニングラードカウボーイズ」が本国を出て、アメリカでのデビューを目指す物語。彼らはアメリカのディープサウスを目指し、そこで成功を収めることを夢見ていますが、音楽的な才能よりも奇抜な外見に注目されるばかりで、中々上手くいきません。

 

コメディとリアルな描写を組み合わせた、奇抜な秀作。そしてこの作品こそ、同監督が世界的に注目されるきっかけとなったのです。

 

 

さて本題。

 

 

いきなり個人的な話になりますが、筆者は10年前まで音楽をやっていました。もちろんアマチュアでしたが、仕事をしながら定期的にステージに立ち、誰にウケる訳でもない三流ロックを奏でていたものです。

 

そしてそれよりも遥か昔、今から24、5年前は、より本格的に音楽をやっていたのですが、いわゆる売れないミュージシャンでした。CDも売れず、動員もいつだって歯抜け状態。つまり鳴かず飛ばずで結局諦めたという顛末。

 

そんな売れないミュージシャンがこの映画を観ると、実に共感できるポイントが多いことに気づきます。

ブッキングマネージャーの横柄な態度然り、観客の冷めた反応。売れないミュージシャンあるあるといったところでしょうか。

 

外見こそ彼ら(レニングラードカウボーイズ)よりおとなしいものでしたが、グラマラス・ロックの影響をモロに露呈した奇抜なスタイルは、誰がどうみても”川崎から来たオカマ達の群”でした。

 

そんな僕がこの映画を観て衝撃を受けたポイントはただ一つ。

 

『楽曲が素晴らしい』

 

その一点に尽きます。

 

確かに笑える描写が多く、コメディ映画として非常に秀逸していると思いますが、曲の良さが際立って、肝心のコメディ要素が霞んでしまっているような気がします。まあ嬉しい誤算なのかもしれませんが。

 

で、この映画に登場する架空のバンド「レニングラードカウボーイズ」は、映画の高い評価を受け、実際にその名前を冠してデビューします。元々は別の名前で活動していたようですが、映画に感化されたファン達が、同バンドでのデビューを熱望したことが理由のようです。

 

しかし、彼ら名義でのCDはさほど流通されておらず(とっくに廃盤になっていると思いますが)、残念ながら僕は聴いたことがありません。動画サイトなどで演奏シーンを観るのが関の山です。

 

現実での評価はさておき、作中のレニングラードカウボーイズのメンバーは、貧困に喘ぐ日々を耐え忍んでいます。売れなければ食えない世界故、彼らはいつだって欲求不満の塊であり、ギャラをピンハネし続けるマネージャーとの確執が深くなっていきます。

 

そして・・・・・・・

 

あとはご自身の目で確認してみて下さい。

 

泣ける要素こそ皆無ですが、いつだってバカみたいに笑える同作は、憂さ晴らしにはもってこいの一本と言えるでしょう。

 

極端なローラー族的ないでたちは、誰しも一度はコスプレしてみたいという願望が芽生える筈(筆者だけかも・・・)。音楽が人のメンタルに与える影響の程がリアルに感じる筆者おすすめの一本です。そしてこの作品、実は第二弾も製作されていて、そちらもまた楽曲が素晴らしいです。というか、楽曲は第二弾の方が良いと思うのですがどうでしょう。

 

という訳で、僭越ながら「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」のおすすめ度は・・・

 

★★★★★★☆☆☆☆

 

6つということで。

ABEMA

★★★★★★★★★☆ ナイト・オン・ザ・プラネット(1991/アメリカ)

<ナイト・オン・ザ・プラネット概要>

「ナイト・オン・ザ・プラネット」(原題"Night on Earth")は、ジム・ジャームッシュ監督によって制作され、1991年に公開された作品。内容はとてもシンプルで、各都市で務めるタクシー運転手たちの一夜を描いたアンソロジー映画です。

 

同作品は5つの異なる都市(ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキ)を舞台に、各都市のタクシー運転手が夜の街を走る様を描いています。各エピソードは独立した物語(ショートムービー)であり、それぞれの都市や登場人物の特徴や文化が反映されているのが大きな特徴と言えるでしょう。

 

さらに同作品は、ジャームッシュお得意と言える対話重視のスタイルで構成されており、登場人物たちはタクシー内での会話や街の風景を通じて、孤独・悲しみ・喜びなどの感情を共有します。さまざまな文化や人間関係の視点から都市の夜の世界を描き出し、観る者に深い感銘を与える作品です。

 

 

では本題。

 

いくら好きでも連続でジャームッシュ作品もどうかな? と思ったのだけど、やはり欠かせないので早速まとめてみました。

 

前回紹介した「コーヒー&シガレッツ」同様、同作品もオムニバスになっており、全5編のショートムービーで構成されています。ポイントは、この5編が個々に独立したテーマを持っている点です。それらテーマが具体的に語られることはありませんが、どの話も観る者に何かしらの気づきを与えてくれるものになっています。どんな話なのか? というと・・・

 

①ロサンゼルス

ビッチ・ドライバーと化したウィノナ・ライダーは、一見軽そうで適当な人間に見えるが、実は目標を達成するため、地道に努力をしているのが伺えます。そしてその「対」の存在として登場する芸能エージェントのおばさん(ヴィクトリア)は、自身の直感を信じ、それを他者にゴリ押ししてでも思い通りに着地させようと躍起になる言わば自己中ババアです。

 

貧乏でめちゃくちゃな生活を送るが目標に対して誠実な女と、ビバリーヒルズ在住の金持ちで、自己顕示欲の強い中年女性。相反するその様子は、話の冒頭でも表れています。空港の公衆電話で、タクシー会社のボス(上司?)に悪態をつくビッチ・ドライバーと、その背後で携帯片手に上から目線で同僚に報告するババア。その後二人は同じ目的(現地に辿り着く)を持って一台のタクシーに乗り込むのだけど、その不一致が人生の陰陽を表現しているように思えてなりません。

 

ウィノナ・ライダー反日と聞いてがっかりしたのですが、この作品における彼女のキャラクターには共感できる部分が多く、とても可愛らしいと思いますね。

 

②ニューヨーク

はい、この話が一番好きです。

字幕を読まずに英語での会話を聞いているだけで泣きそうになるくらい好きです。

多くは語りません。ヨーヨーとヘルメットによるブルックリンまでの珍道中。僕は何度も泣きましたよ。ヨーヨーの優しさと、まるで天使であるかのようなヘルメットの純粋さに。

 

③パリ

キレやすくプライドの高い移民の黒人ドライバーが主役。

途中で乗せる盲目の若い女性とのコントラストがとても印象的な一話。不自由であることを障害と思わず、堂々と自分の思うように生きるその女性の様子を見て、黒人ドライバーは自分の欠点や弱さ、本質を隠そうとする様が非常にリアルです。オチを作らないジャームッシュにしては、話のオチが結構インパクトありました。

 

④ローマ

ここで登場するのは「ジャームッシュ組」の筆頭俳優と言えるロバート・ベニーニ。言わずもがなですが、彼にこういうアホな男の芝居をさせたら右に出る者はいません。とにかく笑えます。冒頭からニヤニヤしっぱなしです。間抜けで運の悪いタクシー運転手の悲哀でまとめられたこの話は②以上にコメディ要素が強く、最終前の息抜きとして非常に意味のある一話になっています。

 

ヘルシンキ

これをラストに据えるあたり、さすがダウン・バイ・ローを作った男だなと妙に関心してしまったが、これは言わば人情噺です。童話になってもおかしくない(おかしいかも・・・)構成であり、笑えて泣けて腹も立つ、てんこ盛りのミクスチャーぶりが潔い一話。ネタバレ厳禁故、詳細は書きませんが、この話の最後とエンドロールの繋がりが、「シティーハンター×GET WILD」以上のマッチングを醸し出しているものだから、映画が終わってしまう寂しさを強く感じてしまいます。

 

くどいと分かりながら語ってしまったな。

とにかくジャームッシュ作品の優れたところは「観ていて全く疲れない点」に尽きるでしょう。

逆に言えば見せ場もなければオチもない、非常に平坦なストーリーということになるのだけど、僕のようにそういう世界観が死ぬほど好みという人も多いのではないか? と思います。

 

なので、人生に疲れ切った夜は、間違いなくこの作品を観ながら横になっています。

この前など、終日エンドレスでこの映画をリピートしていたのだけど、どれだけ病んでいるのかというね。この作品を観る頻度は、僕にとって不幸の程や疲労バロメーターになっています。

 

という訳で、僭越ながら「ナイト・オン・ザ・プラネット」のおすすめ度は・・・

 

★★★★★★★★★☆

 

9つということで。

DMM × pixiv推しホーダイ

★★★★★★★☆☆☆ コーヒー&シガレッツ(2003/アメリカ)

コーヒー&シガレッツ概要>

同作品は、アメリカの映画監督であるジム・ジャームッシュによって2003年に制作されたアンソロジー映画。16mmの白黒フィルムで撮影され、一連の短編から構成。各短編は、コーヒーとタバコをテーマに、異なる登場人物や状況を描いています。

 

映画に登場する人々は、カフェやバーでコーヒーを飲みながらタバコを吸い、日常のさまざまな会話や出来事を通じて人間関係や生活の深い部分を探求。登場人物たちは、都会の喧騒や孤独、友情や愛情など、さまざまなテーマを背景にして、生活の喜びや苦悩について語り合います。

 

特徴はジャームッシュ監督のシンプルで対話重視のスタイル。ジャームッシュファンにとっては魅力的な作品ですが、さほど好きではない方にとっては非常に退屈かもしれません。しかしながら一風変わった雰囲気と、深い思索やユーモアを兼ね備えた魅力的な会話の数々は、一見の価値アリと言えるでしょう。

 

 

という訳で記念すべき一回目は、ジム・ジャームッシュ監督の『コーヒー&シガレッツです。

 

何故この作品なのか? というと、ズバリ私が無類のジャームッシュファンであるからに他なりません。

初回ということで僕の映画趣向を簡単に紹介しておくと、ハリウッドの作品や、アクション映画が大の苦手で、どちらかというとミニシアター系と言われる作品ばかり好む傾向があります。中でも、ジム・ジャームッシュヴィム・ヴェンダースゴダールが好きで、音楽を流すように仕事をしながらスマホでそれらの作品をエンドレスで流しっぱなしにすることが多いです。

 

では本題。

 

コーヒー&シガレッツ」のどこが良いのか?

概要に書いた通り、この作品はコーヒーとタバコをテーマにした全11編のショート・フィルムで構成されています。その中でも特筆すべきは5編目の「ルネ」(RENEE)です。主演はタイトルままのルネ・フレンチという女性。なぜ「女性」と形容するのか? というと、この方が何者なのかわからないからであり、女優でもなければタレントでもないようで、推測するに単なる「一般人」なのではないか? という見方が強いのです。

 

そしてこのルネ・フレンチという女性の美しさたるや。。。。

個人的な好みですが、どストライクです。

 

座り方と足の組み方、コーヒースプーンの使い方、髪型、タバコの吸い方、タバコの銘柄(マールボロメンソールライト)、そして顔。顔です顔。美しすぎて言葉がないレベルです。

 

という訳で、僕にとって「コーヒー&シガレッツ」の魅力はイコール「ルネ・フレンチ」と断言しておきましょう。

 

確かにイギー・ポップトム・ウェイツの共演は凄まじいインパクトだし、ジャームッシュお抱え俳優と言っても過言ではないロベルト・ベニーニの演技は神がかっている。さらに、テスラコイルと戯れる元ホワイト・ストライプスの二人も今や貴重映像と言えるし、「ゴーストバスターズ」で有名なビル・マーレイとヒップホップコンビのジョイントもドラッギーで刺激的だ。

 

しかし、ルネ・フレンチの存在は、それらを軽く凌駕してしまうほどのインパクトがあったのである。

 

まさか、ジャームッシュの愛人・・・なんてことはないだろうが・・・というか意表をついて妻だったら本当にびっくりですがどうだろう。

 

という訳で、僭越ながら「コーヒー&シガレッツ」のおすすめ度は・・・

 

★★★★★★★☆☆☆

 

星7つということで。

ABEMA